黒い頭
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)羽子《はね》を
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ヒイラ、フウラ、ミイラよ
ミイラのおべべが赤と青
そうしておかおが真黒け
四つよく似たムクロージ
五ついつまでねんねして
六つむかしの夢を見て
何千万何億年
やっとこさあと眼がさめて
九つことしはおめでとう
とんだりはねたり躍ったり
とうとう一貫借りました。
花子さんは夢中になってお友達と羽子《はね》をついているうちに、羽子板のうらの美しい姉さんの顔の頬ぺたが、いつの間にか羽子のムクロジに当って、ポコンと凹《へこ》んでいるのを見つけました。
花子さんはわっと泣き出して、おうちへ駈け込んで、お母さんの膝へ泣き伏しました。
「お母さん、堪忍《かんにん》して頂戴。羽子板の姉さんのお顔がこんなになりました」
お母さんは背中を撫で、
「そうですか、構いません。これから大切になさい。もう日が暮れますから、御飯をたべておやすみなさい」
と云われました。
花子さんは羽子板の美しい姉さんの顔が可愛そうでなりませんでした。どうかしてもとの通りにならないかと思い、ひょいと
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