結婚して、みんなお前のお得意のコカインの中毒患者にして次から次に自殺みたいな死に方をさせてしまった。そうしてソンナ連中の遺産を一人で掻き集めて栄耀栄華《えいようえいが》にふけりながら、よく、尻尾《しっぽ》を押えられずに来られたもんだなあ、お前は……』……まあ怖い……そんなことがホントに出来るのかしら……。第一コカインなんてどこの薬屋でもお医者以外には決して売らないのに……『しかしお前がドンナに悪智恵の逞ましい毒婦であっても、俺が出て来たらモウ駄目だぞ。俺は根高弓子というお前の真実《ほんとう》の名前から生れ故郷の両親の顔まで知っているのだ。東京の岡田雪子、新潟の甘粕花子、京都の林百合子という三つの変名も、今のお前の変名と一緒に知っているんだ。東京と、新潟と、京都の警察が、今でも雪子、花子、百合子の名前を聞くとピインと耳を立てるに違いないことを、お前自身もよく知っているだろう。俺がお前の今の名前を書いた一銭五|厘《りん》の葉書をタッタ一枚奮発しさえすれば、一週間経たない中《うち》に、お前の首に縄が巻き付くぐらいのことは最早《もはや》、毒婦のお前にはわかり過ぎる位わかっているだろう』……まあ
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