犬のいたずら
夢野久作
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)善《い》
−−
去年の十二月の三十一日の真夜中の事でした。一匹の猪と一匹の犬がある都の寒い寒い風の吹く四辻でヒョッコリと出会いました。
「ヤア犬さん、もう帰るのかね」
「ヤア猪さん、もう来たのかね」
と二人は握手しました。
「もうじき来年になるのだが、それまでにはまだ時間があるから、そこらでお別れに御馳走を食べようじゃないか」
「それはいいね」
二人はそこらの御飯屋へ行って、御飯を食べ始めました。
「時に犬さん、お前の持っているその大きな荷物は何だね」
と猪は小さな眼をキョロキョロさせて尋ねました。
「これは犬の年の子供がした、いい事と悪い事を集めたものさ」
「ヘー。善《い》い事悪い事ってどんな事だね」
「それはいろいろあるよ。他人の草履を隠したり、拾い食いをしたり、盗み食いをしたり、垣根を破って出入りしたり、猫をいじめたり、お母さんや姉さんに食いついたり」
「ヘエ、そんな事をするかね」
「するとも。それから良い方では、人のものを探してやったり、落ちたものをひろってやったり、小さい子をお守
次へ
全4ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング