してやったり、人の命を助けたり」
「ヘエー、それはえらいね。しかしそんなものを集めて持って行ってどうするのかね」
「今に十二年目になると僕が帰って来る。その時には犬の年の子供は最早二十五になっている。男の児は最早兵隊に行って帰って来ているし、女の児ならばお嫁さんに行く年頃だから、その時に良い事をした児には良い事をしてやり、悪い事をした子には何か非道い罰を当ててやろうと思うんだ」
「フーン」
 と猪は犬の言葉を聞いて腕を組んで考えました。
「オヤ猪君、何を考えているのだい」
「ウン。犬さんがそう言うと、成る程一々尤もだが、それはあまり感心しないぜ」
「何故、何故」
 と犬は眼を瞠《みは》って申しました。
「それは、今年はまだ小僧だからまだいたずらをするだろう。しかし二十四にも五にもなったら、だんだんわけがわかって来て、そんないたずらをしなくなるだろう。そんなにいい人になった時に罰を喰《く》わせるのは可哀そうではないか」
 このように言われると犬も考えました。
「成る程。君は猪と言う位で無暗《むやみ》にあばれるばかりと思ったら、中々ちえが深い。そんならこうしようではないか。このいたずらをし
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