の知人を便《たよ》って、九大の眼科に看護婦となって入り込んだ。これを聞いたヨシ子の両親は非常に立腹し、直ちに勘当《かんどう》を申し渡したとの事であるが、美人の評判が高いままに、あらゆる誘惑と闘いつつ、無事にこの四年間をつとめて来たものであった。……(中略)……流石《さすが》の色魔、早川医学士(三〇)もヨシ子と関係して、現在の大浜の下宿に同棲するようになってからは、人間が違ったように素行を謹しんだばかりでなく、得意の玉突さえもやめてしまって、ひたすら彼女との恋に精進するように見えた。彼女ヨシ子の早川に対する愛着が、それ以上であった事は云う迄もない。……(中略)……かくて姙娠七箇月になったヨシ子は、早川医学士と、その友人で、兼てから二人の事に就《つ》いて何くれとなく心配していた姉歯某とが、極力制止するをも諾《き》かず、窃《ひそ》かに旅費をこしらえて、単身人眼を避けつつ、佐賀の両親の許に行くべく決心した……(中略)……わざと博多駅より二つ手前の筥崎駅から、佐賀までの赤切符を買ったが、その列車を待ち合わせている間に、色々と身の行く末を考えて極度に運命を悲観したものらしく、遂に自分が乗って行く筈
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