って、どこに眼があるのかわからない位で、そのままグングン重態に陥って行った。
 枕頭に集まる者は湊屋の生前の親友であった魚市場と青物市場の連中ばかりで、一人残らず無学文盲の親方《おやぶん》連中であったが、それでも真情だけは並外れている博多ッ子の生粋《きっすい》が顔を揃えていた。最早《もはや》湯も水も咽喉《のど》に通らなくなって、この塩梅《あんばい》ではアト十日と持つまい……という医師の宣告を聞くと、一同の代表みたような親友中の親友、青柳喜平氏が二十四|貫《かん》の巨躯を押し出し、篠崎仁三郎氏の耳に口を附けた。
「……オイ仁三郎……貴様はホンナ事に女房と思う女も、吾《わ》が後嗣と思う子供も無いとや……」
 篠崎仁三郎は生前、妻子の事なんか一度も口にした事がなかった。しかし長崎に居た頃一人の情婦みたような女があってソレに女の児を一人生ませているという噂を、皆、聞いていたので、それを慥《たし》かめるために青柳喜平氏がこう聞いたのであった。
 湊屋仁三郎は仰臥したまま黙ってうなずいた。やっと眼をすこしばかり開いて、布団の裾《すそ》の方の箪笥《たんす》の上の小箪笥を腫れぼったい指で指すので、その
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