ズ痒いような気持で、サテは少《ちっ》と中毒ったかナ……と思ううちに指の尖端《さき》から不自由になって来ます。立とうにも腰が抜けているし、物云おうにも声が出ん。その中《うち》に眼がボウ――ッとなって来て、これは大変《おおごと》が出来たと思うた時にはモウ横に寝ているやら、座っているやら自分でも判然《わから》んようになっております。ただ左右《りょうほう》の耳だけがハッキリ聞こえておりますので、それをタヨリに部屋の中の動静《ようす》を考えておりますところへ、聞慣れた近所の連中の声がガヤガヤと聞こえて来ます。気の早い連中で、モウ棺箱を担《いな》い込んで来ている模様です。
『馬鹿共が。又三人も死んでケツカル。ほかに喰う品物《もん》が無いじゃあるまいし』
『知らぬ菌蕈《なば》喰うて死んだ奴と鰒喰うて死んだ奴が一番、見《みっ》ともないナア』
『駐在所《ちゅうざい》にゃ届けといたか』
『ウン。警察では又かチウて笑いよった。いま警察から医師《いしゃ》が来て診察するち云いよった』
『診察するチウて脈の上った人間はドウなるもんかい』
『棺の中へ入れとけ。ドッチにしても形式《かた》ばっかりの診察じゃろうケニ』
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