ども》が中毒《あた》って死んだならどうしなさるな』
と押止めますと、親父は眼を剥《む》いて母親《はは》を怒鳴《がみ》付けたそうです。
『……甘いこと云うな。鰒《ふく》をば喰い能《き》らんような奴は、博多の町では育ち能らんぞ。今から慣らしておかにゃ、詰まらんぞ。中毒《あた》って死ぬなら今の中《うち》じゃないか』
そげな調子で、いつから喰い初めたか判然《わか》りませんが、鰒《ふく》では随分、無茶をやりました。
最初は一番毒の少ないカナトウ鰒をば喰いましたが、だんだん免疫《なれ》て来ますと虎鰒、北枕ナンチいうものを喰わんとフク喰うたような気持になりまっせん。北枕なぞを喰うた後で、外へ出て太陽光《ひなた》に当ると、眼が眩《も》うてフラフラと足が止まらぬ位シビレます。その気持の良《え》え事というものは……。
それでもダンダンと毒に免疫《なれ》て来ると見えて、後日《しまい》には何とものうなって来ます。北枕を喰うた奴も一町内に三人や五人は居るような事でトント自慢になりまっせんケニ、一番恐ろしいナメラという奴を喰うてみました。
ナメラというのは小さい鰒で、全身《ごたい》が真黒でヌラッとした見
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