じゃ無い[#「無い」は底本では「無ない」と誤記]のです。僕はソンナ恐ろしいお茶の中毒患者になって、青春を萎《しぼ》ましてしまいたくないのです。どうぞどうぞ後生ですから……サ……早く……そいつが眼を醒まさないうちに……。
ナ……何ですって……。支那の魔法ですって……?……。
ヘエ……貴女がお祖父《じい》様からお習いになった支那の魔法の中に、飛去来術《ひきょらいじゅつ》というのがある。ヘエ。それはドンナ魔法ですか。
イイエ。初めて聞いたんです。全く知らないんです。飛去来術なんて……ヘエ。その魔法を応用したら、僕の煩悶《はんもん》なんか他愛なく解決されてしまう。ホントウですか……ヘエ。コンナ密室でしか行えないから都合がいい。ヘエ。貴女なら嘘は仰言《おっしゃ》らないでしょう。教えて下さい。ヤッテ見て下さい。その飛去来術っていうのを……どうするのですか。
眼を閉じている……いいです。閉じています。……そうして一から十まで数える……支那の数え方で……ええ。知ってますとも。大きな声で……よろしい。承知しました。いいですか数えますよ。
……イイイ……。アルウ……。……サンン……。スウウ……。
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