さな新聞紙の切れ端を引き出したのよ。妾がチャンと抱っこしていたのに……ええ。そうなのよ。そのお人形さんのお腹の壊れた処を新聞で貼って、その上から丈夫な日本紙で貼り固めて在《あ》ったの。それが剥《は》がれて出て来たの。大方《おおかた》鼠がその糊を喰べようと思って引き出したのでしょう。可哀そうにねえ。
妾その時ドレ位泣いたか知れやしないわ。そうしてね、余《あんま》り可哀そうですから、頂き残りの御飯粒で、モト通りに貼ってやりましょうと思った序《ついで》に、何の気も無しに、その切端《きれはし》の新聞記事を読んでみたらビックリしちゃったの。妾、今でも暗記してるわ……あんまり口惜しかったから……。
こうなのよ……。
……彼女は遂に発狂して、叔父の家の倉庫の二階に監禁《かんきん》さるるに到った。ここに於て彼女を愛していた名探偵青ネクタイ氏は憤然として起《た》ち、この事実の裏面を精探すると、驚くべき真相が暴露《ばくろ》した。すなわち強慾なる彼女の叔父は、彼女の母親の財産を横領せむがため、窃《ひそ》かに彼女の母親を殺して、地下室の壁の中に塗籠《ぬりこ》めたもので、次いでその遺産の相続者たる彼女を不
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