男は拝喜して帰った。
 アトで某クラブへ行ってこの事を話したら、集まっていた男の中の一人が突然に笑い出した。
「アハハハ。その字は帰りに十円で売ったろう」
 皆ゲラゲラと笑い出した。「東京にはその手が多いからね」
 筆者は愕然とした。トタンに東京が底の知れないほど恐ろしくなった。心の中で某クラブの連中に永久の絶交を申渡しながら東京を去った。



底本:「夢野久作全集7」三一書房
   1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行
   1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行
初出:「探偵春秋 2巻2号」
   1937(昭和12)年2月
入力:川山隆
校正:土屋隆
2007年7月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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