なりました。
 リイは又こう云いました。
「お二人がえらくおなりになったのは、この鉄砲と刀のおかげです。けれども又こんなに喧嘩をなさるのも、この鉄砲と刀があるからです。お二人が仲よくさえなされば、この鉄砲も刀もいらぬ物ですから私がいただいてまいります」
 と云ううちに、東の方に向って遠眼鏡でお月様をのぞきながら、
「アム」
「マム」
 と一時に云いました。
 そうすると、見るみるうちにリイの足は岩の上から離れて、刀と鉄砲を荷《かつ》いだまま月の世界の方へ飛んでゆきました。
 月の世界では月姫がリイを待っておりまして、
「よくお帰りになりました」
 とお迎えに出て来ましたが、見るとリイの眼はいつの間にか両方とも開《あ》いておりましたので、月姫は又ビックリして、
「まあ。あなたの眼が両方とも開《あ》いていますよ」
 と云いました。リイもこれを聞くとやっと気がつきまして、
「ヤア。ホントに。これは不思議だ。これは大かた今まで自分ひとりで遊んでいたのに、今度はお兄さんたちの仲直りをさせたので、神様がごほうびに開いて下すったのでしょう」
「ほんとにそうでございましょう。おめでとう御座います。さあ
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