も見える遠眼鏡《とおめがね》が欲しい」
 と云いました。
 これを聞いたお父さんとお母さんはお笑いになって、
「お前達の云うものはみんな|六ヶ《むずか》しくてダメだ。それにアアのもサアのも、鉄砲だの刀だの、あぶないものばかりだ。そんなものを欲しがるものじゃない。リイを見ろ。一番ちいさいけれども温柔《おとな》しいから、欲しがるものでもちっともあぶなくない。みんなリイの真似をしろ」
 と、兄さん二人が叱られてしまいました。そうして何も買ってもらえずに、只お祭りを見たばかりでお家《うち》へ連れて帰られました。
 アアとサアと二人の兄さんは大層|口惜《くや》しがって、今夜リイをウンとイジめてやろうと相談をしましたが、リイはチャンときいて知っておりました。
 その晩、兄弟三人は揃って、
「お父さんお母さん、お先へ……」
 と云って離れた室《へや》に寝ますと、間もなくアアとサアは起き上って、リイをつかまえて窓から外へ引《ひき》ずり出して、そのまま窓をしめて寝てしまいましたが、リイは前から知っていましたから、声も出さずに兄さん達のする通りになっていました。
 リイはそのまま窓の外の草原《くさはら》に
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