骸骨の黒穂
夢野久作

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)人気《にんき》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)浅黄|木綿《もめん》の小旗が、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》り
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 まだ警察の仕事の大ザッパな、明治二十年頃のこと……。
 人気《にんき》の荒い炭坑都市、筑前《ちくぜん》、直方《のうがた》の警察署内で起った奇妙な殺人事件の話……。
 煤煙に蔽われた直方の南の町外れに、一軒の居酒屋が在った。周囲は毎年、遠賀《おんが》川の浸水区域になる田圃《たんぼ》と、野菜畑の中を、南の方飯塚に通ずる低い堤防じみた街道の傍にポツンと立った藁葺小舎《わらぶきごや》で、型の如く汚れた縄暖簾《なわのれん》、軒先の杉葉玉と「一パイ」と染抜いた浅黄|木綿《もめん》の小旗が、町を出外れると直《す》ぐに、遠くから見えた。
 中に這入《はい》ると居間兼台所と土間と二室《ふたま》しか
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