怪夢
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)厳《おごそ》かに
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二百|封度《ポンド》を突破すべく、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》った。
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工場
厳《おごそ》かに明るくなって行く鉄工場の霜朝《しもあさ》である。
二三日前からコークスを焚《た》き続けた大坩堝《おおるつぼ》が、鋳物《いもの》工場の薄暗がりの中で、夕日のように熟し切っている時刻である。
黄色い電燈の下で、汽鑵《ボイラー》の圧力計指針《はり》が、二百|封度《ポンド》を突破すべく、無言の戦慄《せんりつ》を続けている数分間である。
真黒く煤《すす》けた工場の全体に、地下千|尺《しゃく》の静けさが感じられる一|刹那《せつな》である。
……そのシンカンとした一刹那が暗示する、測り知れない、ある不吉な予感……この工場が破裂してしまいそうな……。
私は悠々と腕を組
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