《にんぴにん》。キ……貴様はコノ俺を……オ……オモチャにして殺すのか……コ、コ、コノ冷血漢……」
「科学はいつも冷血だ……ハハ……」
相手は白い歯を出して笑った。突然に空を仰いで……嘯《うそぶ》くように……。
私は夢中になった。イキナリ立ち上って檻《おり》の中から両手を突き出した。相手の白い診察着の襟《えり》を掴んでコヅキ廻した。
「……サ……ここから出せ……出してくれ……この檻の中から……そうして一緒に研究を完成しようじゃないか……ね……ね……後生《ごしょう》だから……」
私は思わず熱い涙に咽《む》せんだ。その塩辛い幾流れかを咽喉《のど》の奥へ流し込んだ。
けれども診察着の私は抵抗もしなければ、逃げもしなかった。そうして患者服の私に小突かれながら苦しそうに云った。
「……ダ……メ……ダ……お前は俺の……大切な研究材料だ……ここを出す事は出来ない」
「ナ……ナ……何だと……」
「お前を……ここから出しちゃ……実験にならない……」
私は思わず手をゆるめた。その代りに相手の顔を、自分の鼻の先に引き付けて、穴の明く程覗き込んだ。
「……何だと! モウ一ペン云って見ろ」
「何遍云った
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