が御覧になりましたならば、きっと気が変になったものとお思いになったでしょう。
 お兄様……ああ……おなつかしいお兄さま……。そう申し上げてはわるいのかも知れませぬけれども、どうぞおゆるし下さいませ。私はその夜《よ》から貴方様を私のタッタ一人のお兄さまときめてしまっていたのですから。そうしてもしホントのお兄さまでおいでにならないのでしたら、そのホントのお兄さまよりももっともっとおなつかしい大切の大切の秘密のお兄様と思って恋い焦れながら死んで行きたいと、そればかりを神様にお願いするようになりましたのは、その夜《よ》からの事で御座いましたから……。
 そのあくる朝になりますと、私は熱が出ましたようで、時々クラクラとたおれそうになりましたが、一生けんめいに我慢をしまして、思い切り白くお化粧をして顔色の悪いのを隠してしまいました。
 それを奥様が御覧になって、
「マア。トシ子さんたら。何て慌て方でしょう」
 とお笑いになりながら髪結《かみゆ》いさんを呼んで来て下すったのですが、その時に私は「生れて初めて他人に髪を結ってもらうのだ」と思い思い鏡と向い合ってはおりましたが、心の中は睡《ねむ》ってばか
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