ので、もうとても助かる見込みはありませぬことで御座います。
 それから、その次のわけと申しますのは、申し上げたらビックリ遊ばすか存じませぬが、私の右の背中から、右の乳の下へ抜けとおっております刀の刺し傷で御座います。この傷の痕《あと》と、それにまつわっております私の生涯の秘密ばかりは、たとい生命《いのち》にかえましても他人様に気付かれまいと思いましたために、斯様《かよう》な病気になりましてもお医者様にも見せずに秘め隠して参ったので御座いますが、只今となりましては、もはや、あなた様にだけは、どうしてもお打ち明け申し上げなければならぬ時節が参りましたものと存じているので御座います。
 それから今一つ、あなた様にこの身をお委せ出来ませぬ一番大切な理由《わけ》と申しますのは、ほかでも御座いませぬ。
 失礼とは存じますが、貴方様と私とは、この世に生れ出ました時から、赤の他人同志ではなかったように思われるので御座います。その証拠の一つとして貴方様は、前にも申し上げますように、私のお母様のミメカタチをそのままのお姿でいらっしゃるので御座いますが、一方に私の姿もまたあなた様のお若い時の御様子を、そのま
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