した。
お父様のその時のお顔はまるで病人か何ぞのように血の気がなくて幽霊のようにヒョロヒョロしておいでになったようです。そうして平生《いつも》のように私の頭を撫でようとなされずに、ドスンドスンと私の琴を跨《また》ぎ越して、お床の間に置いてある鹿の角の刀掛《かたなかけ》の処にお出でになって、そこに載せてある黒い長い刀の鞘《さや》を抜いてチョッと御覧になりました。
それを又元の処にお架《か》けになると、今度は怖い怖い、今思い出しても身体《からだ》の縮むような眼つきをしてジーッと私の顔を御覧になりましたが、やがて気味のわるい笑みをお浮かべになりながら、ふるえる私をお抱き上げになって、又お床の間の前に来てお坐りになりますと、やはり私の顔を見入っておいでになりました。口元が見る見るうちに、わななき歪《ゆが》んでその大きな眼から涙をポロポロとお落しになりました。
私は泣くには泣かれずに、唯、怖いような悲しいような思いで一パイになって、お父様の顔ばかり見ておりました。すると、お父様は何とお思いになりましたことか、突然に私を突き放しざま、私の左の頬を力一パイお打ちになりましたので、私は畳の上にひ
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