たので御座いました。けれども、それでもあの阿古屋の顔を左向きにして、男らしい長い眉をつけただけで、ソックリそのまま信乃の顔になることが子供心にすぐとわかりました。それと一緒に、お母様がその錦絵をお選《えら》みになったホントのお心持ちが初めてわかったような……けれどもまた、あからさまにはわからぬような……不思議なような恐ろしいような……そうしてそのわけを打ち明けて、お母様にお尋ねする事も出来ないような息苦しい気もちに打たれて、私の小さな胸がどんなにワクワクと致しましたことでしょう。けれどもその時の私には、そんなにまで深く自分の気もちを考えてみるような力はありませんでした。ただ何かしら悪い事をしたのを隠しているような怖い怖い気持ちになって、お父様とお母様の顔を見上げる事も出来ないままに、お煙草盆の頭を傾けながら一心に、信乃と現八の顔を見比べていたように思います。
もっともその時にもお父様は、何もお気付きにならなかったようでしたが、おおかたそれは、あなたのお父様のお名前がかわっていたせいで御座いましたろう。
「この瓦をどうして本物の通りにするか」
なぞとニコニコして、お母様に尋ねておいで
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