話でした。
 その時のお母様のお喜びになった御様子は今でも眼に残っております。手を揉《も》み合せて顔を真赤にして、さも心配に眼を潤ませて、お父様の御返事を待っておいでになる物ごしが、まるで赤ん坊のようにイジラシク見えました。
 お父様は直ぐにお許しになりました。しかも大乗気の御様子で、
「奥(お母様のこと)はわしの顔を手本にしてこの三国志の人形を作ったのでナ」
 とその時の模様を大自慢でお話しになりましたので、お母様は恥かしがって真赤になったままお台所の方へ逃げておいでになりました。私もすぐにあとから追っかけて参いりましたが不思議なことにお母様は、いつの間にか青い顔におなりになって、台所の上り口に腰をかけてシクシク泣いておいでになりましたので私もビックリしました。そうしてどうなすったのかと思ってお傍へ行ってお顔を覗《のぞ》き込みますと、お母様はもう大きくなっている私の身体《からだ》を赤ん坊のように抱き寄せて、私の鼻のお化粧を鼻紙でお直しになりながら、
「私は錦絵さえいただけばお金なんか要《い》らんのに、お父様はいつまでも慾の深いことばかり仰有って………」
 と、さも口惜しそうに唇を噛ん
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