をこちらから進んでお打ち明けする訳には行かないのですから……。ほかの方と幸福な家庭をお作りになるのかも知れないのですから……。私はそのお邪魔をしないように……私というものがこの世に居りますことを、お兄さまに絶対にお知らせしないようにして、芸術のために身を捧げましょう。お母様に敗《ま》けないように清浄な一生を送りましょう」
といく度か思い思いしては青い青い澄み渡った朝の空を仰いだことで御座いました。
それから後《のち》の私は、外《ほか》から来るいろいろな誘惑や迫害とたたかいながら、心の中で、かような決心を固く固く守り続けて行くばかりで御座いました。
音楽学校を卒業致しました時に、岡沢先生から洋行のおすすめを受けました時も、お気に障《さわ》らないようにしてお断り致しました。……本当を申しますと、飛び立つような思いがしないでは御座いませんでしたが、万一そのために私の写真が新聞に載りまして、お兄様のお眼に止まるようなことがありはしまいかと思いますと、何となく空恐ろしい気持ちがして躊躇されたので御座いました。もしか致しますと、これもお兄様と私とにまつわっておりました、不思議な運命のしわざか
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