はまだ左程《さほど》に禿《は》げていず、全体に醜くはないが、好男子という程でもない。しかしどことなくノッペリしたところは貴族的で婦人に敬愛されそうな顔立ちである。かなり高い顳※[#「※」は「需+頁」、第3水準1−94−6、61−10]骨《しょうじゅこつ》と、薄い眉とは犯罪性をあらわし、狭く尖《とが》った鼻の頭と、稍《やや》角張った大きな顎《あご》は敗け惜しみの強い性格をあらわしているが、小さな分厚い唇はどちらかといえば考えの浅い、お人好しの性格を見せている。これに反して広い平ったい額は疑い深い、もしくは底意地の強い才智の働きを表明し、耳は又、女性的で温順《おとな》しい恰好をしているなぞ、随分矛盾した特徴を持った顔で、全体を綜合した印象から云っても、ちょっとどんな性格か要領の得難《えにく》い表情と云わねばならぬ。ただ、眼だけは誰が見ても酒精《アルコール》中毒で、白眼が黄色く濁って、暴風雨の後《のち》の海を見るような気味のわるい光りを放っている。
◆体格 身長五尺六寸余。酒肥りにデブデブ肥っていて体量も二十貫位ありそうに見える。顔も手足も真黒く日に焼けているが地肌は酒で色付いている胸部を
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