輝かしながら……。
 志免警視は一歩進み出て少年の肩に手を置いた。
「……正当防衛にしといて上げる。実はゴンクールの自殺なんだけど……あはははは……ねえ諸君そうだろう」
 皆一斉にほっと安堵《あんど》のため息を吐いた。
 そのうちに嬢次|母子《おやこ》は思わず抱き合って嗚咽《おえつ》の声を忍び合った。一同は粛然と首低《うなだ》れた。
 私も椅子に腰をかけたままがっくりとうなだれた。……日本と米国の飛行機が入り乱れて戦う夢を見ながら……。
       ×          ×          ×
 これ位でよかろう。
 あとは書いても詰まらない事ばかりだから……。
 しかし次の二三項だけはこの事件のお名残《なごり》として是非とも読者諸君に報告しておかずばなるまい。
 志村浩太郎氏の遺産は藤波弁護士の尽力で、全部、志村|母子《おやこ》からの寄附の名の下に、死傷者の手当見舞、慰労と、帝国ホテルの損害賠償とに費消された。
 樫尾大尉は、翌々晩……忘れもしない大正九年三月二日の夜の松平男爵の招宴をお名残として、又も行方を晦《くら》ましてしまった。あたまと体力を使いきれないで困っているのはあの
前へ 次へ
全471ページ中469ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング