るゴンクールから電話だ……と云った時には飛び上りましたよ。天祐にも何にも向うから引っかかって来たんですからね……取るものも取りあえず部下を引っぱって向うの門の処まで来てみたんです。……ところが来てみると課長殿が窓一ぱいに立ちはだかって腰のピストルをしっかり握り締めながら、室《へや》の中を覗いておられるでしょう。そこで此奴《こいつ》はうっかり手が出せないなと思ってそーっと課長殿の背後《うしろ》の椿の蔭から覗いて見ると驚きましたねえ。……あのゴンクールの銃先《つつさき》を真向《まとも》に見ながら、あれだけの芝居を打つなんか、とても吾々には出来ません。扉《ドア》の外で黙って見ているお母さんの気強さにも呆れましたが……手に汗を握らせられましたよ。まったく……」
志免警視は心から感心したらしく眼をしばたたいた。先刻《さっき》からてれ隠しに台所の方へ出たり入ったりしてお茶を入れかけていた嬢次|母子《おやこ》は首すじまで赤くなってしまった。
「……いいえ……何でもないんです」
と云ううちに振袖に赤い扱帯《しごき》を襷《たすき》がけにして、お茶を給仕していた少年は、汗ばむ程上気しながら椅子に腰をか
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