字下げ終わり]
……と……。その時に樫尾大尉は、傍《かたわら》のカルロ・ナイン殿下をかえり見て何やら眼くばせをした。殿下は大尉の顔を見て莞爾《にっこり》とうなずかれると、つかつかと私に近寄って、小さな手をさし出された。私は又も文句なしにその手を握らせられた。
「……サヤマ……サン。アリガト。フランス……ノ……チチ……ニ……テガミ……デ……シラセ……マス……」
という無邪気な日本語が殿下の唇から洩れた。私は露西亜の双鷲《そうしゅう》勲章を受けた以上の感激に打たれて、思わず最敬礼をお返ししたのであったが、その瞬間に私は、私の第六感の暗示が一つ残らず鮮かに的中していた事を覚ったのであった。そうして又それと同時に、その第六感の暗示を判断した私の頭が、如何にみじめなあたまと行動であったかを覚らせられて、気が遠くなる程の面目なさを感じさせられつつ恐る恐る机の前に引返したのであった。
……これを仏蘭西のウラジミル大公に報告されてなるものか……。
と吾れにもあらず赤面しつつ……するとその私を追いかけるように樫尾大尉が進み出て私に一通の手紙を渡した。
それは日本封筒に私の名前だけを書いたもので
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