んですけど、その時はどうしても見当らなかったんです。貴方がおいでになれば何でもなく片付いたんでしょうけれども……お蔭ですっかり蜂の巣を突っついたようになっちゃって非道《ひど》い眼に会いましたよ。ははは。しかし課長殿もこれで清々されたでしょう。はははははは」
警官|気質《かたぎ》で無遠慮な志免刑事は、紹介とごちゃ交ぜに弁解しながら顔を撫でた。その中を志村未亡人は進み出て、顔も上げ得ないまま、切れ切れに挨拶をした。
「……お顔を合わせます面目もございませぬ。……何から何まで御恩になりまして……お蔭様で、無事に……伜の願いまで叶いまして……もう……思い残しますことは……」
と云ううちに胸が一ぱいになったのであろう。ハンカチを顔に当てて肩を戦《おのの》かした。すると、それを……見っともない。お止しなさい……というかのように嬢次少年が、丸|卓子《テーブル》を抱え起したり、毀《こわ》れ物を片付けたり、奥の室《へや》から椅子を持って来たりし初めた。
その時に門の中に敷き詰めた房州石の上をどっしどっしと歩いて来る靴の音と、ちょこちょこ走りに連れ立って来る小さな足音が、入れ交《まじ》って聞えて来た
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