たりと静止した。同時に何故ともなく自分の背後を振り返って見た。
 月が出ると見えて、門の外の、線路の向う側にある木立が、白み渡った星空の下にくっきりと浮いて見える。
 私は茫然とそこいらを見まわした。

 ……私はこの間、何をしていたか……。
 私は面目ないが正直に告白する。……何をしていたか全く記憶しない……と……。否、自分が立っているか、坐っているかすら意識していなかったのである。ただこの時気が付いたのは、額の右側と鼻の頭とが、砥石のように平たく、冷たくなっている事であった。それは室《へや》の中の様子を一分一秒も見逃すまい、聞き逃すまいとして一心に硝子《ガラス》窓に顔を押し当てていたのであろう。そのほかに自分がどんな挙動をしていたか、どんな顔をしていたか、殆んど無我夢中であった。眼と耳以外のすべての神経や感覚が、あとかたもなく消え失せていたのであった。
 そう気が付いた時に私は初めてほーっと長い長い溜息を吐いた。そうして直ぐにも室《へや》の中に飛び込もうとしたが、まだ一歩も踏み出さないうちに反対に後退《あとじさ》りをした。何が怖ろしいのか解らないまま全身がぶるぶると震えて、毛穴がぞ
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