夕方にきっと貴方がここへお出でになるに違いないと云われました」
 ストーン氏は女の言葉の意味を考えるように、暫く沈黙していたが、やがて静かに声を落して云った。
「その通りです」
 女もストーン氏の真似をするように、何か考えているらしかったが、やがて独言《ひとりごと》のように言葉をつづけた。
「……ですけども夕方から横浜からお出でになるのですから六時か七時頃になるでしょう。ですから九時まで四時間の時間を取っておけば大丈夫と嬢次様は云われました」
「その四時間は何をなさるためです」
「貴方を欺すためです」
「え……何ですか……」
「貴方をお欺し申すのでございます。妾《わたくし》はこうして米国暗黒公使《メリケン・ダーク・ミニスター》、J・I・Cの団長ウルスター・ゴンクール氏をお欺し申しました」

 ……表情が粉砕された……と形容すべきはこの時のウルスター・ゴンクール氏であろう。眼の前に火薬庫が破裂したかのように、思わず両手を顔に当てて丸|卓子《テーブル》の前に仰《の》け反《ぞ》った。眼にも止まらぬ早さで椅子を蹴飛ばして立ち上ると同時に、腰のポケットから真黒な拳銃《ピストル》を掴み出して、女の
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