った無線電報が、奇怪にも曲馬団の交渉報告等に不必要な暗号電報で、しかも国際文書に髣髴《ほうふつ》とした非常な長文電報である事を確かめた一事であった。
 これだけの事実を握ると私は俄然《がぜん》として一道の緊張味を感じない訳に行かなかった。そうして時を移さずこの旨《むね》を倶《ぐ》して新任総監高星子爵に報告しないではいられなくなった。
「……総監|閣下《かっか》。暗号電報の写しはこの通りであります。この電報の最後の署名になっておりますT・M・Sの三字はどう見ても或る個人的の発信者の署名とは思われませぬ。私の考えに依りますと、これは何等かの三字の略号を有する団体のサインを、更に暗号化した代え文字と思われるのであります。
 ……ところで目下米国で最有力な秘密団体は、K・K・KとJ・I・Cとこの二つしかありませぬが、その二つの中でもK・K・Kの方は現在のところウィルソン大統領の懐刀《ふところがたな》と呼ばれております例のハウス大佐の怪手腕によって、極力圧迫を加えられておりますので、真に国際的の活躍をしておりますのはJ・I・Cだけだと思われるのですが……。
 ……ところでこのJ・I・Cと申します
前へ 次へ
全471ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング