の手に渡すという事は嬢次様にとっては生命《いのち》を渡すのと同様でございます。それ位の事がわからなくて、どうして警視庁の捜査課長が勤まりましょう。又、これ程までにして頼まれました事を否《いや》と云うような無慈悲な叔父でない事は妾もよく存じておるのでございます」
ストーン氏は心持ち肩をすぼめたまま、そう云う女の顔を凝視していた。いつとなく雄弁になって来る女の鋭い理詰めと、その理詰めを通じて判明《わか》って来る女の頭のよさに呆れ返っているらしい。しかし間もなく咳払いを一つして、七時三十五分を指している背後の時計を振り返ると、元の通りの寛《くつろ》いだ態度に返ったのは……高《たか》の知れた女一匹……という気になったものであろうか。それとも私がまだ暫くは帰って来ないという女の言葉を信じて、安心をしたせいでもあろうか。
「それからその手紙を、どうしてミスタ・クロダ・サヤマに渡しましたか」
「叔父はそれから曲馬場をまわって、東京駅ホテルの前に行って、二階の窓の一つを見ながら突立っておりました」
「……それは何故ですか」
「何故だか解りませぬ」
「何分位居りましたか」
「五分ばかり」
「そしてどこ
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