った。そうして又女の顔を穴のあく程見ていたが、やがて以前の通りの莞爾《にこ》やかな表情に帰った。
「ああ。貴方は今日曲馬を見においでになりましたね」
 私は感心した。流石《さすが》に頭がいいと心の中で賞めた。
 けれども女は依然として態度を崩さなかった。そうして低い、静かな、はっきりした口調で云った。
「そのジョージ・クレイという方はもう日本にはおいでになりませぬ」
「えっ……」
 とストーン氏は立ち竦《すく》んだ。青い大きな眼を二三度ぱちぱちさせた。
「……ど……どこに行きましたか」
 女は依然として静かなハッキリした口調で答えた。
「どこへもお出でになりませぬ。お母様と御一緒にもう直きに天国へお出でになるのです」
 私は危《あやう》く声を立てるところであった。最前の手紙の中の文句に……私の生命《いのち》が危《あぶ》ない……今一人の相棒の生命《いのち》も駄目になる……とあったのを思い出したからである。
 ……志村浩太郎氏の最後には志村のぶ子が居た。
 ……嬢次少年の最後にはこの女が居る……。
 ……さてはあの手紙は真実であったのか。
 ……私の第六感は、やはり私の頭の疲れから来た幻覚
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