速達便や電報で妾を呼び寄せるのでございます」
ストーン氏はこの言葉を聞くとやっと仔細《わけ》が判然《わか》ったらしく点頭《うなず》いた。けれども、それと同時にいよいよこの女に興味を持ち初めたらしく身体《からだ》をすこし乗り出して来た。
「……はーい……それでは貴女《あなた》の御両親は……」
「わたくしには両親も何もございませぬ。ただ叔父一人を頼りに……致しているのでございます」
女の言葉は急に沈んで来た。そうして又も悲しそうにうなだれてしまった。
名優……名優と、私は又しても心の中《うち》で讃嘆せずにはいられなかった。その言葉つき……その態度……その着物のなよやかな襞《ひだ》までも、実にしっくりと情をうつしていて、だしに使われている赤の他人の私までも、他に身より頼りのないこの女と、その叔父さんなる者の淋しい生活を気の毒に思わせられた位である。
まして御同様に赤の他人の、何も知らないストーン氏が、どうして心を動かさずにいられよう。まったくの初対面の美少女に対して、あまりに詮索がましく尋ね過ぎた事を、心から後悔したらしく、如何にも済まない顔になって、ハンカチで鼻や口のまわりを拭いて
前へ
次へ
全471ページ中349ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング