て五分も隙《すき》のない精力的な物腰である。
表を返すと一枚目から五枚目まで番号が打ってあって細かい英文字が書き聯《つら》ねてあったが、よく見るとそれは何でもない。処々に英語を交ぜた、日本語の羅馬綴《ローマつづり》であった。
午後三時四十分
大正九年二月二十八日 馬場先の柳の下にて認《したた》む
呉井嬢次[#地付き、地より3字アキ]
狭山九郎太様[#中文字]
先程は御心配かけました。あの時間の間違いはマネージャーの命令を、出演者が聞き違えたのでした。しかし詳しい事は申開きをしている隙《ひま》がありませぬ。
私は貴方の御生命が危険だと思います。
警視庁では私服を沢山出して曲馬場を取り巻いております。これは私があの父の遺言書を藤波弁護士にお眼にかけたためです。藤波さんが外務省と警視庁とを一緒に動かされたものと思います。
けれども団長のバード・ストーンはまだ曲馬団が、警視庁に疑われていることを知らないようです。きょう団長は馬が騒ぎ出す前に、ハドルスキーと、こんな打合せをしておりましたから……。
「……ジョージが逃げたのはもしや曲馬団の秘密を知っ
前へ
次へ
全471ページ中329ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング