時に一層猛烈に藻掻きまわって、嬢次少年を一刻も早く引っ捕えるべく、焦躁《あせ》りまわらずにはいられなくなった事がある。
それは他でもない。嬢次少年の「復讐」という事であった。嬢次少年はその両親の讐敵《かたき》を取るべく私を手先に使って、曲馬団に致命的の打撃を与えているのだ……という私の直覚? であった。
私はこうした事実を頭の片隅で推理すると同時に、ほんとうにキチガイになりかねないくらい恐怖戦慄したのであった。絶叫し狂乱したのであった。……如何にJ・I・Cが日本民族の敵とはいえ、如何に曲馬団が兇悪無残の無頼漢の集まりとはいえ、又、バード・ストーン団長が如何に両親の仇《かたき》とはいえ、これに致命的の打撃を与える手段として、何の罪も報いもない数十名の美人を狂馬の蹄鉄にかけて蹴殺させるというような極悪残忍な所業《しわざ》が、果して人間の……しかも一少年の頭から割り出され得ることであろうか。東洋文化の真只中、大東京の中心地として、馬場先の聖域と東京駅と、警視庁とを鼻の先に控えた晴れの場所で、ついこの間まで現役の探偵として多少共に人に知られた私をタマに遣《つか》って実行された事であろうか…
前へ
次へ
全471ページ中292ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング