を拾うが否や、ハドルスキーの後を逐うて行った。私を欺いた憎むべき悪少年、呉井嬢次を捕えるためである。
見物は総立ちになった。吾も吾もと仕切りの柵を越えて、演技場の中に走り込んで、一時に楽屋の入口の方へ殺到した。いつ這入って来たものか四五名の巡査が手を挙げて制しているが、野次馬は益々殖えるばかり……楽屋の入口は見る間に人足と巡査と見物の群で、押すな押すなの大雑沓を極めた。
しかし私はそんな騒ぎを後にして一直線に楽屋の中を眼がけて突進した。そうして巡査と押し合う人間の袂《たもと》の下をかいくぐって、躓《つまず》きたおれんばかりに楽屋の奥へ転がり込むと、楽屋の連中は皆、外へ逃げ出すか、馬の処へ駈け付けるかしているために、どの室《へや》も森閑と静まり返っている。
荷物部屋らしい室《へや》の前に来ると、ここばかりは他の室《へや》と違って、壁が亜鉛《トタン》張りになっていて、やはり亜鉛《トタン》張りの頑丈な扉《ドア》が付いている。その扉《ドア》を開くと苦もなく開《あ》いたが、中に這入って扉《ドア》を締めると真暗になる。懐中電燈を点《とも》してみると嬢次少年が云った通り、向うの隅に真鍮《しんち
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