一揖《いちゆう》したが、その気高い姿勢と、洗煉された足取りは、疑いもない宮廷舞踊の名手である事を証明していた。
その姿が満場のどよめきを背後《うしろ》にして楽屋口に消え込むと、見物の中には申し合わせたように番組を出して次の曲目を見る人が多かった。私の前の席に居る霜降りマントに黒山高の白髯《はくぜん》紳士と、左に居る角帽制服のすらりとしたチャップリン髭の青年も大きな声で話を初めたが、二人は識《し》らない同志らしいけれども双方とも余程の馬好きらしく、最前から頻《しき》りに馬の話をし続けているのであった。
「面白かったですね」
「さようさ……最前の満洲馬よりも、馬が立派じゃから引っ立ちますな」
「満洲馬と哥薩克《コザック》馬はあんなに違うものでしょうか」
「違いますともさ。この頃の哥薩克馬には、ノースターや、アラビッシュの血が交っておりますのでな。哥薩克[#「哥薩克」は底本では「哥薩哥」と誤記]の頭目じゃったミスチェンコの乗馬なぞは立派なアングロ・アラビッシュのハンツグロで、しかも哥薩克以上に耐寒耐暑の力が強かったそうですがな」
「へえ……して見ると満洲馬はまるで駄馬ですね。小さくて……」
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