しお》頭を真黒に染めて、いつも生やしっ放しの無精髭《ぶしょうひげ》を綺麗に剃って、チェック製黒ベロアの中折《なかおれ》の下に、鼈甲縁《べっこうぶち》の紫外線除けトリック眼鏡を掛けて、ルーズベルト型ダブルカラに土耳古更紗《トルコさらさ》の襟飾《ネクタイ》、黒地のタキシード服と、青灰色の舶来地外套、カンガルー皮入のエナメル靴を穿いて、茶色のキッドの手袋に、銀頭の紫檀《したん》のステッキという十年も若返った姿をしている。実は嬢次少年が注意しなければ、もっと手軽な変装で済ますつもりであったが……、
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……仲間にハドルスキーといって団長の片腕になっている露西亜人がいる。この男は鬚武者の巨漢《おおおとこ》の癖に恐ろしく智恵の廻る奴で、この一年ばかりの間、団長と一緒に欧羅巴《ヨーロッパ》[#《ヨーロッパ》は底本では《ヨーヨッパ》と誤記]をメチャメチャに掻きまわして廻ったのは、ハドルスキーの智恵に外ならぬ。だから団長は曲馬団の事をハドルスキーに任せ切っている位である。……ところがこのハドルスキーは、嘗て桑港《シスコ》のホテルで同室した際に、この曙《あけぼの》新聞を私の鞄の底から引
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