だけしか見なかったのかも知れないが、とにかくその二人の眼は、偶然に私を見た眼付きではなかったようである。二人とも何かしら同じ秘密の意味を以て、私の顔を注視して行ったものとしか思われなかった。
 ……咄嗟の間に私の頭の中はぐるりと一廻転した。
 この曲馬団を真先に……まだ全部が日本に到着しない以前から怪しいと睨んだのは、誰でもないここに居る私で、そのために私は警視総監と意見を衝突さして辞職した位である。そうして今日はその正体を見定めに来ている私である。一つは警視総監の鼻を明かし旁々《かたがた》、呉井嬢次の讐討《かたきう》ちの助太刀《すけだち》をするに就いて、準備的の偵察をこころみるために……それからもう一つは嬢次少年が、生命《いのち》に拘る大切なものを蔵《かく》しているという黒い手提鞄《てさげかばん》を、是非とも楽屋から盗み出しておかねばならぬというので、それを手伝ってやるためにわざわざ出かけて来た者である……が……それを彼等二人は感付いているのであろうか……否……否……そんな事は有り得べき道理がない。この大勢中に、どうして私を見付けられよう。
 殊に……私は変装をしている。胡麻塩《ごま
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