であるが、何もかも眩しい程の白ずくめの中に、黒い縮れた髪に蔽われた頬と、胸に挿した一輪の薔薇《ばら》とが薄紅色をしているばかりである。雪の精というものがもし外国にあるならば、このような姿ではあるまいかと私は思った。
 その瞬間に雷のような喝采が再び湧いた。私はシュミッド特製のオペラグラスを眼に当てた。
 私は決して好色漢ではないつもりであるが、青年時代を西洋で過したお蔭で、美人の鑑定法ぐらいは一通り心得ているつもりである。殊に、美人というものの標準から見れば、日本美人は到底、西洋美人の敵でないという議論は、よく洋画家なぞが口にするところで、自分も固くそう信じているのであるが、不思議にも今まで、あまり共鳴者がないばかりでなく、西洋かぶれの候《そうろう》のと烈しい反対を喰った事さえある。これはこの議論が、日本人特有の負け惜しみ根性を刺戟するせい[#「せい」に傍点]らしいが、それにしても、これ位明白な事が解らぬというのは、余りに尻《けつ》の穴の狭い話で、こんな涙ぐましい愛国心ばかりで固まり合っているから、横着な、図々しい西洋文明にたたき付けられてしまうのだと、私はいつも憤慨していた。殊に今双
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