して動かす事が出来ない。現在私の手中にある。
……この少年は果してそのような古今の名探偵に比すべき頭脳を、今から備え持っているのであろうか……。
……それともこれが世にいう親子の因縁……もしくは目に見えぬ魂の引き合わせとでもいうものであろうか。
かよう考えて来ると私はもう、自分の考えに堪えられなくなって、思わず遺書をパタリと閉じて、机の上に置いた。居住居《いずまい》を正して少年に問いかけた。
「……成る程……わかりました。しかし君は今しがた、お母さんが何者にか殺されたと云いましたね」
「ハイ……」
少年は依然として淋しそうな顔を上げた。その睫は涙のために乱れていた。しかし言葉はハッキリとして落ち着いていた。
「ハイ……申しました」
「……その事実はどうして解ったのです」
「だって……生きている筈がないんですもの……」
と云ううちに少年は又も力なくうなだれてしまった。
「……ハハア……それじゃ、お母さんからのお消息《たより》が、それから後《のち》ちっともないのですね」
少年はうなずいた。
「……成程《なるほど》。君が曲馬団に居るとすれば、お母さんが何等かの方法で会いに来ない筈
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