わかるようにしておきました。運転手なんていうものは……」
自動車が突然にビックリするような警笛を鳴らした。と思う間もなく一気に濠端を突き抜けて、プロペラーのように幌を鳴らしながら三宅坂を駈け上った。後窓《アイホール》から振り返って見ると、熱海検事を乗せた自動車はまだ桜田門の前に来たばかりである。
「後の自動車《くるま》は大丈夫かね」
「はい行先を教えておきました。熱海検事はまだ犯人は決定している訳じゃない。しかしもうすこし調べておく必要があるから一緒に来ると云うんですが……」
と云いながら志免警部は鋭い眼付きで私を振り返った。しかし私は返事をしなかった。ただ顔を見覚えておくために、眼の前に坐っている運転手の顔を、反射鏡で気取《けど》られないように覗き込んだが、見れば見る程ガッシリした体格で、肩幅なぞは普通人の一倍半ぐらい有《あ》りそうに見える。しかもその顔は私の思い做《な》しか知らないが、最前帝国ホテルの前で私に「馬鹿野郎」を浴びせた獰猛な人相の男に違いないようで、その軍艦の舳《へさき》のようにニューと突き出ている顎が背後から見てもよくわかる。しかし服装は最前と丸で違って、黒い口覆
前へ
次へ
全471ページ中152ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング