ビール会社征伐
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)周囲《まわり》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四条|畷《なわて》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)ゴム※[#「毛にょう+(鞠−革)」、第4水準2−78−13]《まり》
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毎度、酒のお話で申訳ないが、今思い出しても腹の皮がピクピクして来る左党の傑作として記録して置く必要があると思う。
九州福岡の民政系新聞、九州日報社が政友会万能時代で経営難に陥っていた或る夏の最中の話……玄洋社張りの酒豪や仙骨がズラリと揃っている同社の編集部員一同、月給がキチンキチンと貰えないので酒が飲めない。皆、仕事をする元気もなく机の周囲《まわり》に青褪めた豪傑面を陳列して、アフリアフリと死にかかった川魚みたいな欠伸をリレーしいしい涙ぐんでいる光景は、さながらに飢饉年の村会をそのままである。どうかして存分に美味《うま》い酒を飲む知恵はないかと言うので、出る話はその事バッカリ。そのうちに窮すれ
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