筈のものでない。しかも、それがわかった時はビタミンの発見と同様、遠からず平々凡々な趣味によってしまうべき運命を持っているので、現在のように大衆を酔わせる力はなくなってしまうであろう――ナアンダ。つまらない――というような心細い感じもするようである。

 しかし、又、万一それがそうでなかったらどうであろう。唯物文化が唯一の生命としている――2+2=2×2=4――式な哲学に飽き果てた近代人が、その生活の対照として石から油を取るような思いをしてヒネリ出した趣味が、コンナ「探偵」とか「猟奇」とかいう趣味傾向となってあらわれたものであるとすれば、どうであろう。
 問題は実にタヨリナイものに化する。手の甲にツバキをつけて垢をコスリ出して自分のキタナサに驚いて楽しむ趣味と同じものになる――イヤジャありませんか――ペッペッ――しかし又、同時に問題は非常に重大化する。こうした趣味の芸術は、あらゆる芸術の先鋒を承って行くべき――そうして将来益々その精鋭の度を加えつつ――あらゆる方面に人類の生活をエグリ付けつつ――新領土を次から次に開拓して行くべき、人類の生命の躍動の最新最鋭の、白熱的尖端――オヤオヤ――ス
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