んで来る、仄青《ほのあお》い光線をたよりに、両側に二つ並んでいる急な階段の向って左側を、ゴトンゴトンと登り詰めて右に折れると、今度はステキに明るい南向きの廊下になって、右側に「実験室」とか「図書室」とかいう木札をかけた、いくつもの室が並んでいる。その廊下の突当りに「出入厳禁……医学部長」と筆太に書いた白紙を貼り附けた茶褐色の扉が見えた。
先に立った若林博士は、内ポケットから大きな木札の付いた鍵を出してその扉を開いた。背後《うしろ》を振り返って私を招き入れると、謹しみ返った態度で外套《がいとう》を脱いで、扉のすぐ横の壁に取付けてある帽子掛にかけた。だから私もそれに倣《なら》って、霜降《しもふり》のオーバーと角帽をかけ並べた。私たちの靴の痕跡《あと》が、そのまま床に残ったところを見ると、部屋中が薄いホコリに蔽《おお》われているらしい。
それはステキに広い、明るい部屋であった。北と、西と、南の三方に、四ツ宛《ずつ》並んだ十二の窓の中で、北と西の八ツの窓は一面に、濃緑色の松の枝で蔽《おお》われているが、南側に並んだ四ツの窓は、何も遮《さえぎ》るものが無いので、青い青い朝の空の光りが、程近い
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