……」
 若林博士のこうした言葉には、鉄よりも固い確信と共に、何等かの意味深い暗示が含まれているかのように響いた。
 しかし私は、そんな事には無頓着なまま、頭を今一つ下げた。……どこへでも連れて行くがいい。どうせ、なるようにしかならないのだから……というような投げやりな気持で……。同時に今度はドンナ不思議なものを持出して来るか……といったような、多少の好奇心にも駈られながら……。
 すると若林博士も満足げにうなずいた。
「……では……こちらへどうぞ……」

 九州帝国大学、医学部、精神病科本館というのは、最前の浴場を含んだ青ペンキ塗《ぬり》、二階建の木造洋館であった。
 その中央《まんなか》を貫く長い廊下を、今しがた来た花畑添いの外廊下づたいに、一直線に引返して、向う側に行抜けると、監獄の入口かと思われる物々しい、鉄張りの扉に行き当った……と思ううちにその扉は、どこからかこっちを覗いているらしい番人の手でゴロゴロと一方に引き開いて、二人は暗い、ガランとした玄関に出た。
 その玄関の扉はピッタリと閉め切ってあったが多分まだ朝が早いせいであったろう。その扉の上の明窓《あかりまど》から洩れ込
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