してあって何等の異状をも認めなかったそうである。又飲酒泥酔して下宿に帰り、或《あるい》は散歩と称して外出して帰宅しない事も、従来毎月一二回|宛《ずつ》あった事とて下宿の者も何等怪しまなかったという。
奇怪な謎[#「奇怪な謎」は本文より4段階大きな文字]
狂少年の一語[#「狂少年の一語」は本文より4段階大きな文字]
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右に就て同解放治療場の監視人であった甘粕藤太氏は、負傷した胸部に繃帯を施したまま市内|鳥飼《とりかい》村自宅に於てかく語った。
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全く不意の出来事で、こんな事なら初めからあのような役目を引き受けなければよかったと後悔しています。しかし責任は無論私にあるでしょうし、殊に狂人の解放治療場は昨日限り閉鎖されているそうですから、取り敢《あえ》ず正木先生の手許へ辞表を出して謹んでおります。あれが気違い力というものでしょうか、意想外の強力《ごうりき》で力を入れ切っておりますところへ不意に肩をすかされましたために思わぬ不覚を取りまして二度も気絶して面目次第も御座いません。しかし二度目の気絶からはすぐに覚醒しましたので、
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