の紺色の紙に、金絵具で波紋を描いたところから一寸《ちょっと》ばかり離れた個所に、五行に書かれた肉細い、品のいい女文字であった。これが小野鵞堂流《おのがどうりゅう》というのであろうか……

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子を思ふ心の暗《やみ》も照しませ
   ひらけ行く世の智慧のみ光り
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  明治四十年十一月二十六日
[#地から2字上げ]福岡にて 正木一郎母 千世子
  正木敬之様 みもとに
 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………私の頭髪は皆、逆立《さかだ》った……。
 ……慌てて絵巻物を捲き返そうとしたが……手がふるえて取り落した……。
 ……と、その絵巻物がさながら生きているもののように、ひとりでに捲き拡がって、大|卓子《テーブル》の上から床の上に這い落ちて、リノリウムの上をクルクルクルと伸びて行くのを見ているうちに、ゾーッとして来て夢中になった私は、どうして扉《ドア》を開いたか、いつ廊下を走ったか判らぬまま階段を一散に駆け
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