点]、そのために今一人しかおりませぬ小使が[#「そのために今一人しかおりませぬ小使が」に傍点]、足を踏み挫きまして休んでおりますようなことで[#「足を踏み挫きまして休んでおりますようなことで」に傍点]……先生様もお気の毒で御座います……ヘイヘイ……ヘイ……どうぞ御ゆるりと……」
 禿頭《はげあたま》の小使は冷めた方の茶瓶を提《さ》げて、曲った腰を一つヤットコサと伸ばしつつ、ヨチヨチと出て行った。私は、私の魂を喰いに来た鬼が出て行くかのように、その後姿を見送った。

 小使が出て行ったあとの扉《ドア》がガチャガチャと閉まると、私は又、思い出したようにグッタリとなった。長い長いふるえた呼吸《いき》を腹の底から吐き出しながら、大|卓子《テーブル》に両肱を突いた。両掌《りょうて》でシッカリと顔を蔽《おお》うて、指先で強く二つの眼の球《たま》を押えた。頭の芯《しん》が乾燥《ひから》びたような、一種名状の出来ない疲労を覚えると共に、強く押えた眼の球の前にいろいろな幻像があらわれるのを見た。その中を縦横無尽に、電光のように馳けめぐる…… ?《インタロゲーションマーク》 ……を見た。そうしてその…… 
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