、白い患者服の袖《そで》を顔に当てたと思うと、ワッと声を立てながら、寝台の上に泣き伏してしまった。
 私はいよいよ面喰った。顔中一パイに湧き出した汗を拭いつつ、シャ嗄《が》れた声でシャクリ上げシャクリ上げ泣く少女の背中と、若林博士の顔とを見比べた。
 若林博士は……しかし顔の筋肉《すじ》一つ動かさなかった。呆然となっている私の顔を、冷やかに見返しながら、悠々と少女に近付いて腰を屈《かが》めた。耳に口を当てるようにして問うた。
「思い出されましたか。この方のお名前を……そうして貴女《あなた》のお名前も……」

 この言葉を聞いた時、少女よりも私の方が驚かされた。……さてはこの少女も私と同様に、夢中遊行状態から醒めかけた「自我忘失状態」に陥っているのか……そうして若林博士は、現在、私にかけているのと同じ実験を、この少女にも試みているのか……と思いつつ、耳の穴がシイ――ンと鳴るほど緊張して少女の返事を期待した。
 けれども少女は返事をしなかった。ただ、ちょっとの間《ま》、泣き止んで、寝台に顔を一層深く埋めながら、頭を左右に振っただけであった。
「……それではこの方が、貴方とお許嫁《いいなずけ
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